パーソナリティ障害の心理学的分析

  パーソナリティ障害の一般的な現象論的特徴
  パーソナリティ障害とは.対象者が自分の衝動を管理する能力を欠き.無意識のうちに感情や行動をコントロールできない状態を示す心理機能の障害で.臨床的には感情や意志的行動の異常として現れる。 したがって.パーソナリティ障害の人は.(神経症の患者さんに比べて.やや絶対的に言えば)「自意識の心理的葛藤」が少なく.主に対人関係の葛藤が特徴的です。 パーソナリティ障害の診断には.18歳以上であることが必要です。
  パーソナリティとパーソナリティ障害の発症
  パーソナリティ障害は.主に心理的発達の初期.特に生後6カ月から18カ月.さらには36カ月.あるいは生後半年から1年半.あるいは3年までの間.すなわちマーラーによれば「分離-社会化期」に形成されます。 この時期の母子関係は.乳幼児の心理的機能の発達に直接的な影響を及ぼします。
  まず.「共生」時代の特徴を確認しておきましょう。
  共生期は出産後1カ月から6カ月。 母親と赤ちゃんが肉体的にも心理的にも一体となり.母親が赤ちゃんに与える良いケアは.幸福感や全能感につながるのです。
  分離-分割」の段階を見てください。
  生後6カ月を過ぎると.乳児の心理機能が発達し.自分と母親が別の人間であることを認識するようになる。 つまり.母親なしには生きていけないということを理解できるようになるのです。 このとき.幼児の中に分離への恐怖.すなわち「分離不安」が出現し.「分離-社会化」と呼ばれる心理的発達の過程を伴います。
  この過程で.母親から良いケアを受け続けると.子どもは母親の良いイメージを内面化し.「良い母親」のオブジェクト表現を発達させていきます。 本当の母親が一時的に離れているとき.子どもは「良い母親」のイメージに頼って.「弱さ」や「無能さ」の感情を支え.分離による恐怖を薄めようとします。 ですから.良い母親というのは.子どもの内なる安全な島なのです。 子供は飛行機.良い母親は空母のようなもので.飛行機がどんなに遠くへ飛び立っても.空母があることがわかれば.パイロットは安心することができるのです。
  良い母親の特徴
  1.子供を放置するのではなく.積極的に注意する。 率先して子どもの顔を見たり.子どもにいろいろな仕草をして甘える。
  2.子どものすべてを受け入れ.子どものあらゆる変化や行動に敏感に反応し.即座に対応すること。 子どもが笑顔になれば.お母さんもすぐに笑顔になる。 子供が泣くと.母親は顔をしかめて「さっきご飯をあげたばかりなのに.どうしてまだ泣いているのかしら」と心配そうに子供を見つめる。 ああ.お漏らししちゃったんだね」と言いながら.おむつを確認したり交換したりする。
  3.良い母親は.熱くなったり冷たくなったり.予測不可能なことをするのではなく.一貫して赤ちゃんを愛しています。 良いお母さんの一貫性は.赤ちゃんに確かな安心感を与えます。 その結果.子どもは自信と自尊心を育み.他者への基本的な信頼感を得ることができるのです。
  4.子どもに共感できること。 子どもが「おもちゃ」で遊びたい.一緒に遊ぶ子どもを見つけたいと.母親の腕の中からもがき出せば.母親は子どもの心理的欲求を尊重して.子どもを遊びに行かせ.子どもにしがみつくのではなく.子どもが自分で判断して成長する機会を奪ってしまうのです。
   もちろん.良い母親が常にいるわけではありませんし.良い母親が短時間でも子供を置いていくことはあります。 良い母親は.時に子どもにキレたり.無視したりすることもあります。 このとき.子どもは心の中に辛い体験を持っていて.それも母親が原因なので.自分を幸せにしてくれる「良い母親」に加えて.「悪い母親」がいるはずだと単純に考えてしまうのです。 子どもは.自分を幸せにしてくれる「良い母親」のほかに.自分を惨めな気持ちにさせる「悪い母親」がいるに違いないと単純に思い込んでしまうのです。 良い母親」の反対は「良い子供」であり.「悪い母親」の反対は「悪い子供」なのである。
  分離-社会化」の過程で.子どもたちはどのように分離不安に対処しているのか?
  I. ネガティブな対処(本能的な反応.無力感).その結果.心理的な欠陥や病的な性格になる。
  特に.母親の愛が途絶えた場合.子供は「絶対的に理想化された」「良い母親」「良い子供」を偽って構築することになり それを際立たせているのが.「フラグメンテーション」という心理状態である。 これは.愛着.コントロール.自信.自尊心.他者への基本的信頼.自己行動のコントロールのさまざまな症状とともに.異なるタイプのパーソナリティ障害を構成しているのです。
  その分析内容は以下の通りです。
  1.弱者意識を持ち続け.母親への愛着を強める。 母子関係が「停滞」しており.対象者が成人するまで母親から離れる勇気がなく.母親の腕の中にとどまり続け.母親がもたらす幸せや喜びを享受しているとしたら.その人は「依存的人格」であることになる。 この時.対象者は弱さを感じながらも.その弱さに抵抗し.自立するための内的要件や自信を欠いており.自分の努力で幸福や価値観を獲得することができないのです。
  2.分離不安と同時に.愛着の対象を失うことを恐れ.愛着の対象(通常は母親)に対して過剰なコントロールを行い.母親を憎み.同時に(特に母親が自分を拒絶することが多い場合)自分に対しても過剰なコントロールを行っている場合。 この心の不安による過剰なコントロールが.「強迫性パーソナリティ」の究極の姿である。 主な内的感情は「恐怖」や「不安」であり.この感情に対する抵抗である。
  良い母親」と「悪い母親」がその後の母親業によって統合されず.その分裂が幼児期から成人期まで維持され続けると.「境界性人格」が形成されるのです。 “良い母 “だけでなく.”良い母 “もその後の母性によって統合されない場合です。 このとき.「良い母親」と「悪い母親」が分断されるだけでなく.「良い子ども」と「悪い子ども」という子どもの内面も分断される。 “子どもの内面 “も分裂している。 彼は.自分自身が断片化されていることにさえ気づいていない。 境界性パーソナリティの場合.防衛機制の主な特徴は断片化であり.子どもの中で最も顕著な感情は「弱者の感覚」とそれに対する抵抗である。
  4.悪い母親が優位に立つと.子どもは他人との基本的な信頼関係を築くことが難しくなり.「他人は基本的に悪いものだ」と思い込んでしまう。 他人と接するとき.「対人不安」が生じ.「自分はいつも他人から狙われている」と常に警戒するようになるのです。
  もし子供が母親から無関心.あるいは敵意をもって扱われた場合.子供は他人の注目を集めるために戦い.他人の敵意と同調することさえあるのです。
  6.良い母親から十分なケアを受けられず.自分は愛されていないと感じ.「共生期」の幸せに戻ることを空想し.母親からの受容とケアを待ち望み続けると.子どもは自分が「良い子」であることに疑問を持つようになる。 乳児が「良い子.愛すべき子」になろうとする意志があっても.その自信がない場合。 これは.自分がいかに素敵な人間であるかを証明するために.他人から「限りなく褒められたい」という欲求として現れている。 これは「自己愛性人格」と特徴づけることができる。
  7.共生段階で「幸福感」「全能感」を味わえないと.子どもの心は冷たい内面世界となり.他人に愛着を持ったり.人と関わりを持とうとする気持ちがなくなる。 そのため.子どもは「無関心.孤独.孤立」といった特徴を示し.これを「分裂型人格」と呼んでいる。
  8.幼児期に母親から十分な関心と受容を得られず.自分の要求がいつも母親に否定されたり拒絶されたりすると.自分の能力や価値観を疑い.自分が他人から歓迎されるかどうかを疑い.遠回しに他人の関心と受容を得ようと.他人を喜ばせるようになる。 社会的な場面では.より良いパフォーマンスを行い.他者から注目され受け入れられたいという願望はあるものの.内面的な自信や自尊心の欠如.社会的な場面での緊張や不安が強すぎるため.最終的には社会との交流に対して回避行動を取るようになってしまう。 このような行動は大人になっても続き.「不安(回避)型人格」と呼ばれる。
  前向きに対処し.正常な人間機能を発達させる
  分離-社会化期において.乳児は母親から十分なケアを受け続けていれば.心の中の「良い母親という安全な島」を頼りに.どんどん長い時間.遠くへ母親から離れ.自分の自律性と自立性を高め.「自己能力・価値の感覚」を中心に構築していくことができます。 自己効力感や価値観を重視し.前向きで楽観的な自己意識を育み.未知の世界に興味を持ち.母親から離れ自発的に探索するようになり.自立と努力から生まれる幸せと喜びを味わうことができる。
  良い母親が世話をし続けることで.「良い母親」「良い子供」という幼児の内なる空想は.母親と自己の両方に対して過剰で非現実的な要求をすることなく.次第に現実のレベルに近づいていきます。 そして.「良い母」と「悪い母」が同一人物であること.母と私は別人であること.この完璧ではない現実的な母を尊重し受け入れなければならないこと.同時に.「良い自分」と「悪い自分」を分けて考えることができることに.次第に気づいていくのである。 良い自分 “と “悪い自分 “を一緒にして.最終的に不完全な自分を受け入れる。 これで.赤ん坊と母親の分離が完了し.「良い母親」と「悪い母親」.「良い子供」と「悪い子供」の統合が完了します。 良い母」と「悪い母」.「良い子」と「悪い子」を統合し.「自尊心」と同時に「他者を同じ程度に尊重」できる「現実的で前向きな」人格を発現させることである。 良い子」と「悪い子」のキャラクターを統合し.「自尊心」と同時に「他者を等しく尊重する」「現実的で前向きな」人格を示す。
  スペシャルノート
  パーソナリティ障害の形成は.主に3歳までの母子関係が関係している」と強調されていますが.以下の点に注意が必要です。
  1. 前述の「ネガティブ・コーピング」と「ポジティブ・コーピング」は.2つの異なるアプローチではない。 実際.この2つのアプローチは.重なり合いながら子どもたちに演じられ.使われることが多いのです。 したがって.ネガティブな対処スタイルは各個人の中に存在し.人生の後半にストレスフルな出来事に見舞われたときに現れやすいのです。
  2.母子関係はパーソナリティ障害の唯一の十分な要因ではない。 母親の重要性を強調するが.同時に.同じ母子関係が悪くても.乳児の心理的発達の方向性が異なり.異なる人格特性が現れることもある。 これは.幼児が本来持っているダイナミズムによって決定されます。
  3.幼児の心理的発達の初期段階は.その後の心理的発達の前提であり基礎となるが 良い基礎は.その後の心理的機能の発達に有益ですが.良い基礎だけでは.その後の発達も良いとは限りません。 ビルを建てるように.基礎が悪いとしっかりした建物を建てることができませんが.基礎が良いからと言って.その後の各レベルで良い建物ができるわけではありませんし.導くこともできません。
  4.乳幼児の精神発達の初期段階を重要視することは.これらの精神機能が3歳までに完成することを意味せず.また将来的に変化することがないことを意味しない。 多くの精神機能は.3歳を過ぎても発達し.磨かれていくのです。 そして.この発達と洗練の過程で.比較的安定した状態を保ちながら.人格に一定の変化が生じることがあります。 例えば.精神的に健康な人でも.大きな出来事をきっかけに性格が変わることがありますし.幼少期に精神的な未発達や精神機能の欠損があっても.後年になって改善されることがあるのです。 これが.パーソナリティ障害の心理療法の存在根拠です。
  5.パーソナリティ障害は.人格の中で最も顕著なある特徴によって分類されるが.これは “パーソナリティ障害は特定の心理的特徴のみを持ち.他の人格的特徴を持たない “ということを意味するものではない。 あるいは.パーソナリティ障害の類型化は相対的かつ人為的であり.類型間のクロスオーバー(異なるパーソナリティタイプの「共存」または異なるパーソナリティ障害タイプの「併存」)がありうる。
  6.パーソナリティ障害に対する精神分析的治療・介入の最も基本的な仕事の一つは.「患者の良き母になる」こと.すなわち「治療者は来談者の内面化された対象」であり.来談者は治療者が作り出す「良き母」の治療状況を疑似体験していることになる。 セラピストによって作り出された「良い母親」という治療的状況によって.訪問者は再び成長することができるのです。 もちろん.このプロセスは非常にゆっくりとしたものであり.精神分析療法(神経症患者の人格形成を含む)が長い治療期間を必要とする主な理由の一つである。 同時に.パーソナリティ障害の精神分析的治療の過程では.患者が対象を再内面化するための「良き母」としての役割を果たしながら.治療者と面会者の間に厳格な境界を設け.患者自身の自己管理能力と面会者の自己管理主導力を動員することに注意を払わなければならない。 クライアントの人格障害がひどく.自己反省や自己管理が全くできない場合は.精神分析的心理支援療法や単なる行動指導的心理療法でしか治療できません。 したがって.精神分析療法は.それほど重症でないパーソナリティ障害の人にしか効きません。
  7.古典的な精神分析理論.特に後期の「対象関係論」では.人格障害の形成が盛んに論じられている。 これらのテキストを詳しく読んでみるとよいでしょう。 ここでは.私の精神分析理論を応用して.さまざまな性格のタイプの特徴を分析し.記述していますが.これは一種の探検でもあります。