子宮内膜症(以下.子宮内膜症)は.妊娠可能な年齢の女性に多く見られる婦人科疾患であり.近年.その発症率は年々増加傾向にあります。 現在.子宮内膜症には.腹膜炎.卵巣チョコレート嚢腫.深在性浸潤性子宮内膜症(DIE)の3種類があると考えられています。 多くの学者は.これら3つのタイプの子宮内膜症は.それぞれ異なる病態生理学的プロセスであるとみなしています。
I. 定義
深部浸潤性子宮内膜症(DIE)とは.機能性子宮内膜増殖が腹膜や骨盤内臓器の深部に5mm以上侵入しているものを指し.DIEと呼ばれる。 前縁は膣の上3分の1から子宮頸部の後方まで.さらには後下部の峡部まで伸びています。 このように.DIEはある意味.子宮頸部後方内膜症なのです。 病変が骨盤前部にあり.主に膀胱壁に浸潤している患者さんもいます。
II.分類
DIEには単一の分類はなく.どの分類法にも一定の欠点がある。 以下.2つの分類方法について説明する。
1.シャプロンによるDIE病変の4段階型付け
骨盤前方型
膀胱DIE
骨盤後方型
子宮仙骨靭帯DIE
ベージナルDIE
腸管DIE
単一病巣タイプ DIE
u 病変(膣を伴わないもの
膣内病変
多発性病変DIE
2.Donnezらによる3種類のDIE。
II型は膣後部のフォルニクスにある病変:最も多いタイプで65%を占め.バリウム注腸は正常.III型は砂時計型の病変:10%を占め.78%に直腸壁浸潤があり.術前のバリウム注腸と腸管準備.さらに大きな病変には静脈性腎盂造影(IVP)が必要です。大きな病変の場合は.静脈性腎盂造影(IVP)が必要です。
病態の解明
DIE発症の説明には.経皮還流説と腐敗説の2つがある。 現在.深在性子宮内膜症は.女性の月経血が逆流し.子宮内膜腺上皮細胞や間葉系細胞が骨盤腹膜に着床し.質の異なる子宮内膜細胞が骨盤内に逆流して腹膜表面に付着して起こると考える学者が大多数である。 結合組織や平滑筋組織が一緒に増殖し.結節を形成する。 後者の場合.腹膜上やミュラー管残骸上の細胞が子宮内膜細胞に向かって転移し.DIEを形成する。
臨床症状
臨床症状は.病変部位と密接に関係しています。 膣直腸靭帯や子宮仙骨内膜症の患者さんは.月経時に下腹部や腰仙部の痛みを訴えることが多く.それは持続的で時に強まり.月経の前や始まりに最も強く.月経が治まると緩和されるそうです。 深い性交痛は.このグループの患者さんによく見られる症状です。 患者さんによっては.月経量が増加したり.生理が長引いたりして.月経前後に点状出血として現れることがあります。 婦人科検診で子宮直腸窪地や子宮仙骨靭帯に圧痛結節を認めることがあります。 子宮外膜が腸壁に侵入し.直腸を圧迫する塊となり.切迫感.骨盤痛.直腸痛.周期的な直腸出血.下痢.便秘.性交痛などを生じ.重症化すると腸閉塞に至ることもあります。 腸管壁外腫瘤や粘膜外腫瘤は.直腸診で著しい圧痛と滑らかで無傷な粘膜を伴って触知されることがある。 内尿道炎は.膀胱・尿管全体や腎臓にも浸潤している場合があります。 症状は.頻尿.尿意切迫.排尿困難など.月経周期に伴う尿路の炎症が主なものです。 腎臓が関与する場合は.月経時の腰痛と血尿が主な症状で最も陰湿.尿管が関与する場合は.月経時の腎機能障害.腰痛.血尿が主な症状で.高血圧は上部尿路閉塞の存在を示唆.膀胱が関与する場合は頻尿.膀胱部の痛み.排尿痛.血尿が主で.月経時に明らかまたは増悪するが.膀胱腟部の違和感や月経時の違和感のみが現れることもあります。
DIEの解剖学的分布と痛みとの関係
DIEは膀胱の子宮孔.直腸孔.骨盤外壁にできるが.主に子宮仙骨靭帯.子宮直腸窩.膣直腸中隔.膣口.直腸または結腸壁などの直腸孔にできる。 そのため.一般的には子宮直腸窪地の子宮内膜症病変を指してDIEと呼ぶことが多い。 骨盤の癒着の程度も疼痛症状を引き起こす重要な要因である。DIEと臨床的な疼痛症状との密接な関連性は.(1)深部浸潤結節があること。 (1) 月経時の増大または性交時の外力による当該部位に存在する知覚神経への圧迫による痛み。 (2) DIE病巣では.周辺組織と比較して神経線維の分布が増加し.間質細胞.神経束.神経内膜への浸潤が顕著であること。 (3)DIE病変の深部浸潤性増殖により.局所炎症反応と発痛因子の増加が誘導される。
DIEの診断
治療成績は外科的切除の徹底度と明確に関係するため.手術前にDIE部位を特定することが重要である。 症状や婦人科検診.術前の補助的な検査について尋ねることで情報を得ることができます。
DIEの主な症状は痛みと不妊であり.月経困難症.深部性交痛.非周期的下腹部痛.腸管・尿路症状などの臨床症状は病変部位と密接な関係がある。 症状を注意深く問診することで.対応する病巣の位置がわかる。 つらい症状が月経周期とどのように関係しているのか.月経中に悪化するのか.卵巣機能を抑制する薬剤の使用で軽減できるのか.などを知ることが大切です。
婦人科検診:鏡検で後円孔に紫色の結節を認めるのがDIEの典型的な特徴ですが.患者さんによっては典型的ではなく.赤みがかった接触出血しやすい病変や後円孔の粘膜が肥厚して硬くなった状態を認めることがあります。 時には.後円孔粘膜が全く正常に見えることさえある。 経膣的二腔鏡検査で痛みを伴う結節を触知することもあるが.結節を認めず.子宮仙骨靭帯の非対称な肥厚.硬直.圧痛のみを感じる患者もいる。 結節性病変の有無は.必要に応じて三重の検査でより明確に感じることができます。 DIE患者の85%以上では.膣粘膜に目に見える病変はなく.デュプレックス検査で約87%の患者に結節を触知することができます。 したがって.婦人科的検査が全く正常であっても.DIEの存在を否定することはできません。
補助的な調査
経直腸的超音波検査
経直腸的超音波検査の利点はDIEによる直腸壁への浸潤を検出できることである。 直腸壁への浸潤を術前に知ることは.手術方法を決定する上で重要である。 (1)月経時の直腸の炎症。 (2)月経時の直腸出血。 (3)臨床的に直腸壁への浸潤が疑われる場合。 (4)直径3cmを超える病変。 直腸壁浸潤が疑われる場合は.手術前に十分な腸管準備を行う必要があります。
MRI
MRIの利点は.①DIEは主に子宮の裏側にあり.経腟超音波ではうまく検査できない.②骨盤内臓器全体を前方・後方ともに同時に検査できることです。 (2) DIEが膀胱内にある場合.MRIは経膣超音波検査よりも診断的に優れている。 子宮仙骨靭帯の診断ではMRIの感度が高いが.腸管浸潤の程度を判断する感度は相対的に低い。
膀胱鏡検査。
膀胱内膜症が疑われる場合は膀胱鏡検査を行う必要がありますが.膀胱鏡検査で異常がない場合は.膀胱内膜症の存在を否定するものではありません。 膀胱鏡検査では.手術方法を決定するために.病変と尿管膀胱口との位置関係を把握することもできます。
血清CA125測定は,DIEの診断,特に術前に血清CA125が上昇した症例において有益である。 追跡調査による血清CA125の変化は,手術効果の指標となり,再発を予測することができる。
副睾丸浸潤のある患者では.骨盤内尿管滲出液を除外するために両腎の超音波検査を行い.必要に応じて閉塞部位を特定するための静脈内腎盂造影(IVP)と腎機能障害を評価するための腎ヘモグラムを行う必要があります。
治療法
薬物療法:深在性浸潤性病変に対する特効薬はなく.薬物療法の原則や使用する薬剤の種類は他のタイプの子宮内膜症と同様である。 薬物治療の目的は.術前・術後治療の緩和または補助として行われます。 薬で病巣を小さくし.痛みを和らげることができますが.中止しても再発することが多いのです。 一般的に使用される薬剤は.高力価黄体ホルモン.ダナゾール.子宮内膜.ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(GnRH-α).ダナゾール膣リング.レボノルゲストレル子宮内放出システム(Mannorrhea)などがあります。
次のような場合には.薬物療法を考慮することがある: (1) 過去に何度か外科的手術を行った後に症状が再発した場合。 (2)様々な理由で手術を延期する必要がある。 (3) 病変が広範囲で外科的切除が困難で手術のリスクが高い場合.術前の薬物療法により病変を縮小させ.手術による出血を抑え.より安全で効果的な手術を行うことが検討される場合があります。 術後の薬物療法で再発を遅らせることができます。
2.手術:深在性異所性結節は.他の異所性疾患に比べ.外科的治療が行われる可能性が高いです。 手術の目的は.異所性結節を取り除き.癒着を切り離し.痛みを和らげ.骨盤内臓器の解剖学的関係と生理的機能を正常に戻すことで.生殖能力を回復し.再発を遅らせることである。
経腹腔鏡手術と開腹手術のどちらを選択するかは.常に議論のあるところです。 手術方法の選択は.患者さんの病変の病期分類だけでなく.術者の経験や技量にも左右されます。 異なる手術方法が生殖機能に与える影響については.明確なエビデンスはありません。 痛みのコントロールについては.腹腔鏡下病変切除術と開腹手術の両方で.術後の治療効果が顕著に現れています。 また.術後の子宮内膜症の再発までの期間も両者でほぼ同様であり.5年後の再発率は19%であった。
しかし.腹腔鏡検査には次のような利点があります。 腹腔鏡の拡大により.手術視野がより鮮明になり.直腸膣中隔などの特定部位にある異所性病巣の描出が容易になりました。さらに.術後疼痛が少なく.入院期間が短く.術後の癒着も最小限となります。 腹腔鏡は後腹膜腔にアクセスしやすく.病変を特定するための拡大鏡という利点もあります。 腹腔鏡下手術は膀胱を切り詰めた状態で行うため.会陰部での操作が容易で.子宮後部の解剖学的構造を露出させ.膣や直腸のプローブを配置して対応する解剖学的構造を特定することができます。
DIE病変を1回の手術で完全に除去することが良い結果を得るために不可欠であり.DIE病変の分布によって手術のアプローチと範囲が決定されます。 膀胱の内膜症の治療には.膀胱部分切除術が用いられます。 この手術は腹腔鏡でも可能ですが.病変が尿管口にあり.術中に尿管膀胱の留置が必要な場合は.開腹手術が望ましいとされています。
病巣が子宮仙骨靭帯にある場合.腹腔鏡手術で病巣を取り除くことが非常に有効です。 尿管の損傷を避けるため.病変部を切除する際には.まず尿管を切り離す必要があります。 経膀胱的尿管カテーテルは.尿管を分離し.損傷を避けるのに役立ちます。 病変が大きい場合は.直腸外側窩を切り離す必要があることもあります。 病変が両側の子宮仙骨靭帯に及んでいる場合は.両方の靭帯を切除する。逆に.病変が片側の子宮仙骨靭帯のみに及んでいる場合は.患側の側方切除で十分である。 この場合.病変が膣壁に及ばないことが多いので.膣壁の部分切除は必要ありません。
病変が腟壁に及んでいる場合は.腹腔鏡下または経腟的に切除することが可能です。 この場合.まず傍直腸腔を分離し.直腸壁を膣壁から遊離させ.膣壁から病変部を切除する。
腸管内膜症の管理は.病変が腸壁の筋層に浸潤しているかどうかに決定的に依存します。 病変が腸の漿膜表面にのみ存在し.筋層に及ばない場合は.腸の手術は必要ありません。
腸管内膜症の場合.患者の年齢.妊娠希望の有無.過去の手術方法.腸管DIEの特徴(部位.数.大きさ.腸管壁の浸潤の程度.肛門からの長さ.他の場所に併発したDIEの有無).骨盤内癒着の程度や広がり.術者の経験などに基づいて手術方法・手法を決定することが必要です。 腸管内膜症の治療には.開腹手術と腹腔鏡手術の両方が可能です。
腸管DIEに関しては.主にいくつかの外科的アプローチがあります。
腹腔鏡下腸管表在性病変の切除術
腸管漿膜の表面にある表在性の子宮内膜症病変は.ハサミで切除することができます。電気凝固法で切除する場合は.熱傷や腸管穿孔の遅延につながることがあるので.注意が必要です。 病変部を切除した後.ダンプ表面の傷口を断続的に縫合することができる。
腹腔鏡下での腸壁全層剥離術
腸壁全体に浸潤している病変のある患者さんでは.腸壁の全ディスク切除を行うこともあります。 腸壁は病変に沿って縦方向に切開するが.腸管内腔の狭窄を避けるために横方向に縫合することも可能である。 腸管粘膜は3/0 vicrylの連続縫合で閉じ.パルプ筋層は絹縫合で2層に中断して閉じることができる。
腸の部分切除(腹腔鏡手術または開腹手術)
腸管部分切除は腹腔鏡下でも開腹でも可能で.腸壁から子宮内膜症の病変を取り除くだけでよい。 腸管部分切除術は.主に3cm以上の単発病変.腸管壁の筋層の50%以上に浸潤した単発病変.腸管壁の筋層に浸潤した3個以上の病変に適応されます。 病変部を腸壁から切り離すことなく.傍直腸腔を分離して直腸を遊離する必要があります。 線維性脂肪組織は直腸壁の近くで.腸間膜からあまり離さず.病変から2cmのところで切り離すのがベストです。 腸の遠位端を線状切断吻合で切除し.近位端を恥骨結合部の小切開で腹部から切除し.病変部を切除して切断した両腸端を腸管吻合し.骨盤に水を入れて肛門からガスを注入して吻合の漏れを確認することが可能です。
外科的合併症
尿管損傷と吻合部瘻孔の2つがよくある合併症である。 手技の開始時に尿管を解放することで.尿管損傷の発生を抑えることができます。 その他の合併症として.一時的な過敏性腸の兆候.会陰部膿瘍.直腸膣瘻形成などがあります。 また.子宮仙骨靭帯が広範囲に及ぶ場合は.膀胱を支配する神経も損傷し.術後の排尿困難や尿閉の原因となることがある。 消化器系の合併症には.便秘.排便困難.下痢などがあります。